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ジムニー車中泊・ひとり旅
VOL.028
ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.28
ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.28


ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.28 「富士市編」
Traveling alone with jimny.


ダイナミックな夜景を見に行く
日本一高い山と深い海の狭間に


山と海と森と街。ランドスケープの要素がすべてある場所へ。
トワイライトな時間に、そのすべてを楽しんでみる。



Photo & Text : 山岡和正

渋滞はコンスタントに5km以下で流れていた。おそらく連休の余波と工事の影響だと思うが、それにしても酷いものである
カーナビに目を落とすと、目的地の富士市にある林道へはまだ2時間以上を要するらしい。もう9時を過ぎたところで、早朝に出発した意味もない。
とはいえ、今回は現地付近での移動距離も少ないので、いくつかの林道を彷徨ってから野営予定のキャンプ場でのんびりと過ごすことにしよう。

杉林は殺風景だが雑草が少なく走り易い

東名高速道路の御殿場を過ぎたあたりからは車の流れもスムーズになり、なんとか午前中のうちに富士山南側の林道群へと辿り着くことができた。
この辺りは杉林の森で、大小の林道が縦横無尽に広がっている。広葉樹の持つ色気を感じられないのが残念なところではあるが、聳え立つダイナミックな杉の林間コースは走っていて楽しい。そして、ここでは林業が活発で行政も力を入れているようで、よほど細い林道以外は十分に砂利が敷かれ整備されていて走り易い。季節柄か、杉の枯れ葉が砂利の林道を覆い隠していて、それらを取り巻くように緑色の苔が絨毯のように続いている。その光景がウインドウの外側で立体感を保ちながら後方へと流れていく様は、異世界へと紛れ込んだような不思議な感覚にとらわれるのだった。
昼食のことも忘れて林道走行に興じていたら、もう14時になろうとしていた。暗くなると野営の準備に時間がかかるので、あわてて南下し、富士市内で食材を仕入れてから西側の山頂にあるキャンプ場へと向かった。

富士川を越え急な坂道を登って行き、高度を上げて行くと道幅がどんどん狭くなってきた。そして、ブラインドコーナーとアップダウンを繰り返すので、運転にはかなり気を使う。
暫く走り、緩い丘を越えると前方から小型車が上ってきた。お互いに避けたいところだが道が狭すぎるし、待機場所も無い。どうすべきか悩んでいると、前方にいる小型車が急に後退し始めた。
それも、驚くような速さで。
コーナーの続くタイトな道を、バックギアで全開かと思われるスピードである。呆気に取られている間にその車は視界から消えていた。追うように下って行くと、その先に林業の作業現場があり、そこにあの車が止まっていた。
会釈をして通り過ぎたのだが、地元で走りなれた道とはいえ凄すぎる。
速すぎて、一瞬WRCを見ているのかと思った。

眩い人工光の原点は 小さな炎の灯りなのだ

そこから少し行けば、もうキャンプ場だ。受付を済ませて、一番高い場所にある山頂付近のテントサイトへ移動した。見渡せば視界は広く、富士山~伊豆半島~太平洋までの大パノラマが展開し、眼下には富士市や富士宮市の街並みが広がっている。

焚火台の薪に火を入れてから寝床を整え、食事の支度を始めると街にポツポツと灯りが灯り始めた。
この日は風もなく、焚火から上がる炎も美しい形を保っていた。時折鼻をくすぐる潮の香りが、海が近いことを再確認させてくれる。
そして、焚火の向こうに散りばめられた光の欠片を眺めながら珈琲を飲んだ後、車内に戻り寝袋へと滑り込む。
ランタンを消すと、車窓を埋め尽くす銀河が鮮明になる。無数の光はゆらゆらと小さく揺れていて、それに誘われるように深い眠りに落ちて行った。

ずっと見ていられる、眼下の星々

この日、夜空には薄いガスがかかっていて満点の星空や天の川を見ることは叶わなかったが、見下ろせばそれよりもたくさんの輝く光の粒で埋め尽くされていた。

食事はキャンプの醍醐味

時間のある時はレトルトではなく、少しは手間をかけた料理が食べたい。今回は肉メインで、味付けは塩胡椒と生ワサビのみというシンプルなものだが、男のレシピはこれで十分なのだ。

杉は日本一の針葉樹である

ここの林道の大半は杉林の中にあり、綺麗に整地されていた。支線は荒れ気味だが、沢山あり楽しい。ちなみに杉は、樹齢・高さ・数で日本一の樹木であり、日本固有のものなのだ。

ライタープロフィール

山岡 和正

雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。

ウェブサイト:http://kaz-yamaoka.com/
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